Introduction

父は、映画プロデューサーとして精力的に働き、家に帰れば家族を愛する魅力ある人だった。しかし不況の波の中、自ら命を絶ってしまう。残されたのは、多額の借金と未完成の映画だけ。幸せな日々が一転し、絶望の中で葛藤する母娘に訪れた新たな出発とは…。

慈愛溢れるまなざしで描く、家族の悲劇と再出発の物語。

父親の自殺というシリアスなテーマを、光溢れる瑞々しい映像の中に潜ませた巧みな演出が高く評価され、2009年カンヌ国際映画祭《ある視点部門》審査員特別賞に輝いた『あの夏の子供たち』。物語は、父喪失の悲しみを健気に乗り越えようとする、母と3人の娘たちの再出発への道を、まぶしいパリの夏の陽光と共に描き出していきます。

夫の死後、会社の立て直しを決意する、控えめながら気丈な母。父の死を受け止める手段を探す長女。父の残した温もりを求める次女。父の死をまだ理解することの出来ない末娘…。それぞれが絶望の中で葛藤しながらも、心を寄せ合いこの悲劇を受け止める姿が胸を打ちます。

時には自殺という道を選択してしまう人々。遺族には「私たちを残してなぜ?」という気持ちだけが残されます。『あの夏の子供たち』は、その悲しみを丸ごと包み込む慈愛溢れるまなざしで、決して声を大にしたり奇を衒うことなく、それでも続いていく人生の素晴らしさを指し示してくれます。先の見えない不況下で、時に押しつぶされそうになる私たち現代人を支えてくれる珠玉の感動作が誕生しました。

前を向いて確かに歩いていく彼女たちを照らす、まぶしい光と名曲。

尊敬していた映画プロデューサー、アンベール・バルザンの自殺という、監督の実体験から生まれた本作。ミア・ハンセン=ラブ監督は、映画の随所に彼への想いを漂わせながらも、決して感傷に走ることなく、言葉にならない感情を映像に託しました。

郊外の別荘、旅行で訪れるイタリアの町に注ぐ柔らかな陽光と、パリの街のイルミネーション。あるいは、突然の停電に灯したロウソクの揺らめきや、優しい月明かりと星々の煌き…。人生の苦楽、強さと脆さ、生への渇望と死への衝動など、対照的な様々な要素を映し出す光と影の映像美は、それぞれが共鳴し合い、最後には忘れがたい余韻を残します。

また、映画を象徴するかのように使われる名曲「ケ・セラ・セラ」。ヒッチコックの『知りすぎていた男』(56)でドリス・ディが歌い、アカデミー賞主題歌賞を受賞したこの懐かしいメロディーが、ラストの感動をいっそう盛り上げてくれます。

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