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インタビュー

ウニー・ルコント監督より

映画を撮りたいという欲求は、私の人生の遅くにやってきました。少しだけ女優や映画の衣装デザインをやってみたりといろいろ回り道をして、シナリオ養成講座で書いた脚本が『冬の小鳥』の始まりとなりました。

脚本は、私の母国語である韓国語で書かれるべきでしたが、私はすっかり言語を失っていました。フランス語で書くことになりましたが、私は映画という共通言語で書くことを信念としていました。それこそが私のハンデを補ってくれると信じていたからです。

『冬の小鳥』は、私が過ごしたカトリック系の児童養護施設での体験に着想しています。自伝的な要素を消し去ることは困難でしたが、同時にただ記憶の再現にとどめる気も全くありませんでした。捨てられ、養子にもらわれていくという途方もない状況に面した少女の感情を、現代にも通用する形で表現したいと思ったのです。二つの人生が交差したあの日々。諦めることを学ぶ必要もなかったそれまでの人生と、限りなく切望することを知る人生。その二つの結び目をしっかりほどいて見せることは、映画でしかできないと思ったのです。

私はどのように施設に行ったのか覚えていませんが、ジニのように家族が私を迎えに来るのを期待して、心うつろに待っていた記憶はあります。あの時抱いていた一縷の希望は、生涯忘れることができません。この映画は 捨てられた子供が感じる怒りと反抗、子供は受動的な存在ではなく、喪失感や傷を感じられる存在なのだということを描いています。「養子」の話ではなく、万人が理解できる「感情」についての映画です。 ジニはたった一人世界に取り残されてしまいますが、そこから新しい人生を生きていくことを学びます。これは愛する父親を失ったからこそ学びえたことです。今の私の人生があるのも、両親が私を捨てたおかげです。同時に「どうして親が子を捨てられるのだろうか」という問いかけも数え切れぬほどしてきました。ありがたみと捨てられた痛み。実の両親を思い浮かべると、コインの裏表のような感情が複雑に交差します。実父にこの映画を観てほしいとは思いますが、捜してまで会うつもりはありません。今まで父が私を訪ねてこなかったのは、父には別の人生があるということですから。

オリジナルプレス、「主婦生活」2009年11月号より抄訳

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