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1975年、韓国ソウル郊外。よそ行きの服を着せられて、9歳の少女ジニが旅行のつもりで父に連れられてきた所は、児童養護施設だった。父親は必ず迎えにくると強く信じるジニは、頑なに周囲と馴染もうとせず、反発や抵抗を繰り返すが…。

悲しみを乗り越えて、明日へと羽ばたく少女。誰もがその幸せを願わずにはいられない。

『冬の小鳥』は、突然予想もしなかった状況に投げ込まれた少女の、孤独な魂の旅を描いている。大好きな父に捨てられた少女は、たった一人で絶望、怒り、孤独と向き合い、やがて運命を受け入れ、新たな人生を歩む決意をする。 『大人は判ってくれない』(59)や『ポネット』(98)など、子供が忘れがたい印象を残した映画のように、本作では少女ジニの存在感が圧倒的だ。彼女の「もう一度会いたい」と、祈るように父の迎えを待ち続けるひたむきな姿に心を揺さぶられる。そして痛みや苦しみもいつの日か過ぎゆくものであることを、この9歳の少女は教えてくれるのだ。

実際に韓国から養子としてフランスに渡ったウニー・ルコント監督の実体験から生まれた本作。バタークリームのケーキ、おかっぱ頭にアップリケのついたセーター、1975年の生活描写は、昭和の風景にも似て懐かしい。「ほとんどの部分は創作だが、9歳だったときの心のままに書いた」と監督が語る通り、ジニをとおしてスクリーンに焼き付ける感情は、嘘偽りのないものだ。だからこそ映画は強烈な説得力をもって、観る者を深く感動させる。

躍進著しい韓国映画と、伝統あるフランス映画が結ばれて誕生した新たな才能。

脚本を読んだイ・チャンドン(『オアシス』(02)、『シークレット・サンシャイン』(08)監督)は、"シンプルだが沢山の要素が詰まっている"と評し、本作のプロデュースを買って出る。そして、2006年にフランスと韓国で結ばれた<映画共同製作協定>の第1号作品として完成。フランスへ渡り、韓国語をすべて失っていた監督だが、映画を共通言語とし、韓国とフランスのチームワークを得て言語も国籍も超えた映画本来が持つ力が溢れる作品を生み出した。 『冬の小鳥』は、映画誌カイエ・デュ・シネマで、ポン・ジュノ(『母なる証明』(09)監督)が2000年代最高の映画の1本に選出。2009年カンヌ国際映画祭に特別招待され、2009年東京国際映画祭ではアジアの風部門最優秀アジア映画賞を、2010年ソウル国際女性映画祭では第1回アジア女性映画祭ネットワーク賞を受賞した。ウニー・ルコント監督は、今後が期待される監督のひとりである。

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